トルストイの最後を想う
「アンナ・カレーニナ」を読み始める。扉の警句が旧約から「復讐は我にあり、我これを酬いん」ではじまり、書き出しはかの有名な「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」。そしてひきつづき「オブロンスキー家ではなにもかもがめちゃくちゃだった。」と始まり、浮気がばれたことをきっかけに男がなぜ浮気をするか、男と女の心理が書かれて行きあっというまに物語のなかに引きずり込まれる。20050710
「アンナ・カレーニナ」読了。「戦争と平和」よりも卑近なテーマといえると思うがこちらのほうがよかった。愛、性愛、倦怠、死、そんなことがすべて書き込まれていた。20050728
こうして48歳の七月は終わっていった。七月の通勤読書はトルストイ一色であった。前半は「戦争と平和」そして「アンナ・カレーニナ」と読了した。そして月末にトルストイ自身の人生の後半に書かれた「イヴァン・イリッチの死」「クロイツェル・ソナタ」と読んだ。
あわせてロマン・ロランの「トルストイの生涯」を読むことでトルストイの人生における考えの変容を知ることができたような気がした。「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」の健全な、ある意味性愛至上主義をいかに人生論的に自己完結したらよいかという作品から、人生後半の禁欲的な、あるいは宗教的な人生論への変化、だからといって穏やかな晩年を迎えたわけではないという事実。それらのことは、人生の困難さをトルストイが身をもって教えてくれているという気がした。