El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

白痴

書き出しの展開はなかなかおもしろい。死刑の恐怖の話は死の恐怖の話につうじる。癌で6ヶ月の余命と言われて6ヶ月後に死ぬことと治る治ると言われながら6ヶ月後に死ぬこと。前者では死をさとって残りの人生を充実して生きることができるという擁護論があるが死の恐怖はある。6ヶ月後に死刑になることがわかっていてそれまでを充実して飄々と生きられるか。そんな濃い話が冒頭からくりひろげられる。

「白痴」はなかなか読ませる。「罪と罰」「悪霊」よりもおもしろいと感じるのだが「罪と罰」「悪霊」をよんだ頃(とはいっても1年ほど前だが)はストーリーを追うのが精一杯だったような気がする。今回は埴谷雄高の読書案内「ドストエフスキー」(NHKブックス)をあらかじめ読んだことがよかったのだろう。まことに先達はあらまほしきものなりである。本といえば年末に向かって再び岩波文庫が溢れ始めている。岩波文庫は背表紙を全部見ることができる状態を維持したいので抜本的な解決を計らなければならない。現在の増加率では年に100冊は増えていく。