El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

魔女

魔女〈上〉 (岩波文庫)

魔女〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者:ミシュレ
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫
魔女〈下〉 (岩波文庫 青 432-2)

魔女〈下〉 (岩波文庫 青 432-2)

  • 作者:ミシュレ
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫
ミシュレ「魔女(上)」(岩波文庫)を読み始める。ミシュレはフランスの歴史家。古代から中世にかけてキリスト教の伸長により古代からの自然観・アミニズム的宗教観が抑圧される過程で医術や呪術が邪悪なるものとして排除されていった。このうち医術は医学と医師という形でキリスト世界の男の仕事としてコンバートした。しかし産婆など女性的な部分はキリスト世界外として排除されつづけながらも民衆はそれを必要としていた。このキリスト教世界外で隠然とした力をもっていた女性達を排除しようとする動きが「魔女」騒動だと…そんな理解で読み進んでいる。

下巻(第二の書)は魔女の話というよりはイエズス会など権威をかさに着て民衆、ことに女性をくいものにしていた破戒僧の話が中心になる。その悪辣さは驚くべきで教会権威と王権が微妙に協調しながら圧政を遂行するさまは驚くばかり。日本では江戸中期にあたる。当時の日本の人権がフランスよりましだったかといえばそうでもないだろう。ミシュレの記述はときどき暴走するがそれもまたよい。