El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

暗夜行路・ある男、その姉の死

暗夜行路〈前篇〉 (岩波文庫)

暗夜行路〈前篇〉 (岩波文庫)

節々の痛みを感じながら「暗夜行路」を読了する。これはまたこれで格別な味わいとなった。続けて、志賀直哉の一連の自伝的短編三部作「大津順吉・和解・ある男、その姉の死」を読み始める。レビューはそれが終わったあとで。帰りの電車で志賀直哉の「ある男、その姉の死」を読了。
これで、志賀の「父との不和、そして和解」に至るというテーマのものを読み終えた。いわく「大津順吉・和解・ある男、その姉の死」と「暗夜行路
」だ。今の自分は、父との不和というテーマを考えると、自然に自分は父の立場に立っていることが面白い。これまでは、こういう場合、自分が息子であった。それは息子が大人へなろうとしているということに気づき、親子から男と男の関係へ変わっていく過程での通過儀礼なのかもしれない。一方で、長男のこれまでの人生は自分の不安定期にぶつかったため平坦ではなかった。そのことが、自分にとってはいかにも、彼に対する引け目である。そういう感情がないまぜになっているような気もする。