El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

すべて真夜中の恋人たち Audible

川上未映子ワールドに没入 すべて真夜中の恋人たち 作者:川上 未映子 Audible Amazon しばらく時間がかかったが、川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」をAudibleで完聴した。いやあ・・いい。 女性にかぎらず、人間の生きづらさを正面から描いて、なおかつ…

暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ

けっこう読み応えあり!そして原爆はヒロシマに! 暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ 作者:堀川 惠子 講談社 Amazon 宇品とは今の広島港のことですね。太平洋戦争当時、海軍は呉にありましたが、陸軍はどこにあった?日本中から集められた陸軍の兵隊さ…

マゼラン船団 世界一周500年目の真実

内容は「フィリピン史からみた大航海時代」が正しい マゼラン船団 世界一周500年目の真実: 大航海時代とアジア 作者:大野 拓司 作品社 Amazon セールス目的で「マゼラン」をタイトルに入れたのかな。実際はヨーロッパの大航海時代におけるフィリピンの歴史。…

じい散歩 妻の反乱 Audible

じい散歩 妻の反乱 作者:藤野 千夜 Audible Amazon <Audibleで聴いています>

ジジイの片づけ

じいさんの断捨離・終活本があってもいいじゃないか・・・ ジジイの片づけ (「ジジイ」シリーズ) 作者:沢野 ひとし 集英社クリエイティブ Amazon 女性の断捨離が人生の半ばで先を見据えてであるのに対して、男性の断捨離はどちらかというと終活めいてくる。…

ブックガイド(123)ー60歳すぎて臨床にもどる!ー

https://uuw.tokyo/book-guide/ 61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました 作者:香山 リカ 集英社クリエイティブ Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブ…

正義の弧(上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ最新刊に歳月を感じる 正義の弧(上) デザート・スター (講談社文庫) 作者:マイクル・コナリー 講談社 Amazon 正義の弧(下) デザート・スター (講談社文庫) 作者:マイクル・コナリー 講談社 Amazon 姪の結婚式で石垣島へ。その…

テスカトリポカ

ナルコス+アステカ+臓器売買 テスカトリポカ 作者:佐藤 究 Audible Amazon メキシコ麻薬戦争+世界のナルコス(=ドラッグ・マーケット)、そこに関わる日本人、そんな群像をフィクションで読む。フィクションながら、いやフィクションだからこそ、以前読ん…

ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者

Prudentでないこと ロバート・オッペンハイマー ――愚者としての科学者 (ちくま学芸文庫) 作者:藤永茂 筑摩書房 Amazon アカデミー賞を獲得した映画「オッペンハイマー」を近日中に鑑賞予定。あえて、この映画の原作ではなく、日本人(九州大学出身の物理学者…

族長の秋

<マジック・リアリズム >4月は「族長の秋」 ラテンアメリカの文学 族長の秋 (集英社文庫) 作者:ガブリエル ガルシア=マルケス 集英社 Amazon ラテンアメリカ文学のひとつの分野として確かにある「独裁者小説」。それをガルシア=マルケスが書くとこうなる…

女ぎらい ニッポンのミソジニー

日本で正しくフラットに生きて行くためにはミソジニーからの脱出が必要 女ぎらい (朝日文庫) 作者:上野千鶴子 朝日新聞出版 Amazon <読書中>日本人の男はほとんどが「女ぎらい」の「女体ずき」・・・うーん、身もふたもないお言葉。そこから脱出してどうし…

八ヶ岳南麓から

なかなかオシャレな大人の絵本 八ヶ岳南麓から 作者:上野 千鶴子 山と溪谷社 Amazon 「フェミニズム」「おひとりさまの老後」で著名な元東大教授の上野千鶴子さん。雰囲気をガラリと変えて彼女が20数年をかけて築き上げてきた八ヶ岳南麓での暮らしを短いエッ…

ジャズ超名盤研究(全3巻)

まさに日本発の「Encyclopedia of Modern Jazz」 ジャズ超名盤研究 作者:小川 隆夫 シンコーミュージック Amazon 著者の小川隆夫氏は1950年生まれの整形外科医。77年に東京医大卒業後81-83年にニューヨークに医学留学。留学中にアート・ブレーキー、ギル・エ…

友だち

メタな構成で深みが増し増しの不思議な小説 友だち (Shinchosha CREST BOOKS) 作者:シーグリッド・ヌーネス 新潮社 Amazon 冒頭から、自殺した男友達(恋人?)が飼っていた巨大な犬(アポロ:グレート・デン)を託された女性である「私」の独白が続く。文学…

リスボン大地震

ポルトガル史・イエズス会史としても秀逸! リスボン大地震:世界を変えた巨大災害 作者:ニコラス・シュラディ 白水社 Amazon 地震の詳細 第1章 万聖節の日 第2章 秩序の回復 第3章 被害の詳細 リスボン大地震。1755年11月1日発生、死者数は東日本大震災とほ…

カメラは、撮る人を写しているんだ。

禅問答になりがちな「写真とは何か」 カメラは、撮る人を写しているんだ。 作者:ワタナベアニ ダイヤモンド社 Amazon 実は、もっとぐっと写真に取り組もうとカメラを注文しているのだが・・・注文して一カ月たっても手に入らない。このあたりの事情は↓ そう…

春のこわいもの

深川で読む、ちょっと不穏な短編集 春のこわいもの 作者:川上未映子 新潮社 Amazon 下町、思い出逍遥。年に一度はお江戸深川を歩く。今年は3月15-16日、江東区芭蕉記念館、そして懐かしい深川図書館、住んでいた頃はずいぶんお世話になりました。久しぶりの…

雨の日はソファで散歩

14年前の過去の自分に再会、長く続けているとこんなこともある 雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫 た 1-12) 作者:種村 季弘 筑摩書房 Amazon なんだか、最近書店で見かけて買ってしまい、半分ほど読んだところで昔読んだことがあったような気がして、何気な…

黄色い家 Audible

とにかく凄い!川上未映子にしか書けない女子目線の底辺小説 黄色い家 作者:川上 未映子 Audible Amazon 女子目線の底辺小説。このジャンルはいままであまりなかった。 ともかくリアリティがある。川上未映子はwikiによると「大阪府大阪市城東区に生まれる。…

読書企画:マジック・リアリズム(アメリカ編)

2024年度の読書企画のテーマは「マジック・リアリズム」アメリカ編。できれば2025年度にアメリカ以外編を。 失われた足跡 (岩波文庫) 作者:カルペンティエル 岩波書店 Amazon 4月からの新年度のシリーズ読書、2022の「平家物語」、2023「源氏物語」ときて、…

ブックガイド(122)ー日本ではタブー化がすすむ安楽死ー

https://uuw.tokyo/book-guide/ 安楽死が合法の国で起こっていること (ちくま新書) 作者:児玉真美 筑摩書房 Amazon 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトのブックガイドです。第122回目のテー…

ジャズ批評 2024年3月号

3月号「My Best Jazz Album 20XX」だけを買い続けて6年目 ジャズ批評 2024年3月号(238号) (2024-02-24) [雑誌] ジャズ批評社 Amazon 年度末の常連

「すべての野蛮人を根絶やしにせよ」

西ヨーロッパ人がここまで他の人種に対して残虐でいられる理由がわからない 「すべての野蛮人を根絶やしにせよ」: 『闇の奥』とヨーロッパの大量虐殺 作者:スヴェン・リンドクヴィスト 青土社 Amazon 「すべての野蛮人を根絶やしにせよ」ー『闇の奥』とヨー…

まちがえる脳

脳はトータルで考える! まちがえる脳 (岩波新書) 作者:櫻井 芳雄 岩波書店 Amazon タイトルはちょっと中身とはズレているような・・・、しかし視点の新しい脳科学書として読む価値はある。 語り口(文章が・・)が朴訥としているので地味な話が続くのかなあ…

激安ニッポン Audible

シロウト目線・・・ 激安ニッポン (マガジンハウス新書) 作者:谷本 真由美 Audible Amazon かなり近視眼的な本。激安ニッポンであることは確かだが、原因は著者が言うような「長年の企業・役所の生産性の低さ」や「イノベーションのなさ」というよりは、長年…

ブラッド・メリディアン

ウクライナを見よ、ガザを見よ! ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤 (ハヤカワepi文庫) 作者:コーマック マッカーシー 早川書房 Amazon 昨年亡くなったコーマック・マッカーシーの代表作。乾いた文体(うまく日本語でも表現されている)。 1850…

むらさきのスカートの女 Audible

ふしぎな味わいだが・・・ むらさきのスカートの女 作者:今村 夏子 Audible Amazon 叙述トリック?芥川賞は・・なぜ?でいいのかも。 メフィスト賞、でもないか。とはいえ、この後おなじAudibleで「黄色い家」(川上未映子)を聴いてみると、西村賢太の書く…

ダーウィンの呪い

「適者生存」と「貧乏人の子沢山」をつなげると・・・? ダーウィンの呪い (講談社現代新書) 作者:千葉聡 講談社 Amazon 「ダーウィンの呪い」というタイトルだが、「進化論」がいかにたやすく優生学的危険思想に転化してきたか、という黒歴史本。そもそもダ…

人間は老いを克服できない

煽情的ではあるゆえに、コロッと賛成してしまいそうだが・・・ 人間は老いを克服できない (角川新書) 作者:池田 清彦 KADOKAWA Amazon 池田清彦のメルマガ「池田清彦のやせ我慢日記」の連載の1年半くらいを新書にして出版しているもの。いくつか賛成できる論…

祝!完結「私の本棚」3シリーズ 全36回 index

医学系サイトm3に長年連載してきた「私の本棚」シリーズ全3シーズンがこのたび完結。全36回足掛け5年、毎回m3の編集部による丁寧な校正のおかげもあって、読みやすく、読みごたえあり(?)全36回分のindexを下記に。 〇第1シーズン「私の本棚」(2019.8.8~…